室蘭に来て早三日目。ここの空気は澄んでいて自然に溢れている。そしてなにより、とても温かい。もう雪なんてほとんど見当たらない。地元に帰ってからのギャップが怖い。
こっちに来たのは二日の夜。夜だったので、車で走っていても町並みはあまりよくわからなかった。けれど、工場が集結しているところがあって、それを小高い丘のような場所から見たときはなんというか、今までに見たことのないものだったので、頭のどこを探しても似たような景色は見当たらなかった。つまり綺麗だった。工場や、RPGにでてきそうな建物がキラキラと光っていたし、空では、満点の星が煌めいていた。上からも下からも輝きのオンパレード。
家に到着したとき、あたしは最初、ここに居てはいけないような気になった。濃ゆ過ぎる時間や意識がまだ留まっている気がしてならなかったから。息が詰まるような思いだった。けれど、それは幼稚故の葛藤。そんなこと、本当はないとわかっているのに心がいうことを聞かなかった。その日一日は。
三日の朝。清々しい真っ青な空が窓から見えた。なんだかすごく嬉しかった。あたしは五月中旬から毎日、この景色を見ることになる。どんな空模様だろうと、毎日。信じられないな。ここに住むんだ。
その日あたし達は朝ごはんにお互いの分の親子丼を作って食べた。そして昼過ぎから海に行った。室蘭地球岬というところに行った。
海は綺麗とは言えないけれど、あたしは海のあの音、水の動き、地平線を見ているのがすごく好き。まだ水は冷たくて二人であたふたした。砂が暖かくて気持ちよかった。春を感じた。そしてそこから長々とぐにゃぐにゃした細い道を7kmくらい走ったところに見つけた地球岬。展望台に立つと少し足が竦むくらい高い。下のほうに見える崖と、その崖にぶつかる波の具合が火サスみたいで面白かった。強い風が心地よく感じられる場所だった。
帰ってきてからは、前の日の寝不足が響いて爆睡。起きるともう外は真っ暗だった。いつもの優柔不断が災いして、買出しに出る頃には十時半近かった。室蘭で有名な焼き鳥を買って、スーパーでお酒を買った。家に帰ってテレビを見ながら夢中で食べた。笑いながらお酒を飲んだ。こんな日々がずっと続いてほしいと思った。こういう時間ってすごくありふれているようですごく貴重だと思う。後々絶対そう思うときがくる。今一瞬、この時を大切にしたい。
今日は四日。明日は地元に帰る日。
目がぼこぼこになりそうで厭だな。